新書野郎 -7ページ目

「親日」台湾の幻想

「親日」台湾の幻想 (扶桑社新書)「親日」台湾の幻想 (扶桑社新書)
酒井 亨

扶桑社 2010-09-01
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別にフジサンケイグループへのあてこすりではないんだろうが、例の特番の件でNHKを擁護するということが出発点とあった様だ。植民地時代には差別があった。日本時代が良かったというのは、あくまで後の国民党時代に比べての話。現在の台湾の親日は戦後日本の平和文化の賜物といった見方は概ね正しいとは思う。ただ、台湾10年選手として、通り一遍等の日本人の台湾観を批判しているのに、旅行で訪れただけの東南アジアや東欧を親日と断定してしまってはそれこそ「親日」の幻想ではなかろうか。インドネシアやマレーシアの人は穏やかだから、それこそ中韓みたいに日本人に対して攻撃的態度を取ることは少ないと思うし、中韓とて、実際に日本人というだけで、あからさまに態度を豹変させる人は限られているのではなかろうか。中東もそうだが、遠くから来た旅行者をヨイショする習慣はイスラム圏にあろう。日本を含めた多くの国で中国人移住者と現地の人間の間に摩擦が生じているのはたしかだが、最初に中国人かと聞いて日本人だと言うと、一変友好的になるというのは、中国人そのものを嫌っている場合と、日本人が中国人と同一視されることを嫌がっていることを知っていて、そう聞いてくる場合があるので注意が必要だ。そもそも嫌いな人種なら無視するのが自然なので、わざわざ向こうから話しかけてきた場合、後者である可能性は結構高いのではなかろうか。自分の経験からすると、韓国人かと最初に聞いてくるのはそのパターンが多いのだが、本当に韓国人だとか、中国人だとか答えると、相手が困ってしまう時と、中国人は、韓国人はフレンドリーだとか言ってくる時とがあった。そもそも日本と中国の区別が明確でないというパターンは世界の大部分の国であるから、日本人は認めても中国人は認めないというのはある意味名誉白人みたいなもので、日本人への称賛と中国人の悪口を聞かされるのは、耐え難いものもある。
★★

こんなに違う!世界の国語教科書

こんなに違う!世界の国語教科書 (メディアファクトリー新書)こんなに違う!世界の国語教科書 (メディアファクトリー新書)
二宮 皓

メディアファクトリー 2010-06-29
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メディアファクトリーも新書進出か。

知っておきたいアメリカ意外史

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杉田 米行

集英社 2010-08-17
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別にアメリカ史を熟知している訳ではないのだが、何が意外史なのかよく分からんかった。ただ、最近も突如「ティー・パーティー」なるものが復活したりしているので、アメリカ史のおさらいとしてなぞってみるのは良いかもしれない。散々言い尽くされたことだが、オバマ大統領の誕生はアメリカという国の理念に合致したものなのか、或いは反したものなのかと言うと、アメリカ史を紐解く限り、後者の意味合いの方が強い様に思える。現代のティー・パーティーが果たしてそうした効果をも狙っているのかどうか分からんのだが、アメリカの歴史というものが重層的で、「国民の歴史」というものが未だにコンセンサスを得てなくて、あるのは「国民の記憶」であるということは感じる。日本の「国民の歴史」がもはや各自のルーツが分からなくなってしまった時期に創成されたことを思えば、アメリカの「国民の歴史」など今から2000年後くらいに作っても十分なのだが、それでも国民国家の体裁として何がしかの国民の歴史は保持しなくてはならない。となると各々の歴史と国民の歴史に矛盾が生じるのは当然なのだが、とりあえず尊重していたイギリス系植民者の歴史もこうなってくると、その永続性を保証されるものではなくなろう。
★★

ホームレス博士

ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)
水月 昭道

光文社 2010-09-17
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たしかに鈴木の言うとおり、こうなることは最初から分かっていたんでは。

マルチリンガルの外国語学習法

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石井 啓一郎

扶桑社 2010-03-30
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どこに学習法が。

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし

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ケンジ・ステファン・スズキ

角川SSコミュニケーションズ 2010-11-10
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これまで極左系版元から長ったるいタイトルで数冊出してきたこの著者もいよいよ新書進出か。タイトルの長さで釣って、デンマークはこんだけスゴイ、日本は見習えというスタイルは全く同じで、デンマーク教宣教師である自分の利害に沿ったもの。世界一幸せなのに自殺したり、離婚したり、極右政党が躍進したりというのは、おそらく日本人と幸せの回路が違うからではないかと思う。つまりは有名校に合格することや、会社を定年まで勤め上げること、夫婦の仲が冷え切っても離婚せずに家庭を崩壊させないことに幸せを感じる人々が日本では少なからずいるのではなかろうか。それが日本のムラ社会だと言われればそれまでなのだが、医療費を全部無料にするから、消賞税は25%で街医者をかかりつけにしろというのはおそらく反対が多数を占めるのではなかろうか。老人の社交場としての病院はなくなり、自分が希望する治療法も選べないとなれば、いくら無料でも考えもの。学士号をとるとその学士組合に入って同一賃金というのも何か全体主義っぽい匂いがするのだが、文学部とか国際なんちゃら学部とかを卒業した人たちの組合は何の業種が賃金水準になるのか。日本で消費税を25%にしたら、確実に経済が破綻してしまうと思うが、その補填をしようにも原資が取りっぱぐれではどうにもならんだろう。

おそるべし韓国企業

おそるべし韓国企業 日本がサムスンに勝てない理由 (扶桑社新書)おそるべし韓国企業 日本がサムスンに勝てない理由 (扶桑社新書)
野口 透

扶桑社 2010-12-01
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サムソンにしても現代にしても、あまり日本では見かけないから、日本メーカーが韓国メーカーの後塵を排していると言われても、実感が沸き難いのだが、そもそもサムソンと日本ってそんなゼロサムゲームの関係にあるのか。新興市場では強いが、買い替えユーザーが主な成熟市場ではどうなのかという疑問もある。インドだのブラジルだのといいた大規模新興市場もやがて成熟市場に移行する訳だが、アフリカまで新興市場が一巡すると、ハイエンドの日本とローエンドの中国の挟み撃ちにあってしまうのではないかという気がする。そもそも国内市場で利益が出せる日本と海外市場でしか利益が出せない韓国では企業の指針は違ったものであろう。政府の戦略的政策があるのだろうが、サムソン、LG、現代といった数社に集約されているというのも競争力の観点からいって、脱落せずにいつまで続くのかという問題になる。ドバイでの原子力発電所受注でも、国家が損失を負う覚悟で落札したのだろうし、ブラジルの高速鉄道建設は利益が出ないことがハッキリしたため、韓国以外は引き下がってしまい、ブラジルが逆に慌てているといった事情もある。ケンチャナヨで、とりあえず始めてしまうのは韓国企業の利点なのかもしれんが、長期的ビジョンに立たないと、為替の変動ひとつで大出血してしまう可能性がある。まさか北に協力してもらって戦争危機でウォンを引き下げれるなんてことまではしないかと思うが、大統領選などでそうした手を使ったことがあった。別に三橋貴明みたいに韓国経済崩壊論をとるつもりはないのだが、サムソン一社が大幅な利益を計上したところで、どれだけの韓国国民に恩恵を施しているかというとあまり景気の良い話は伝わってこない。日本メーカーがサムソンと価格競争できる体力はあると思うが、それをしないというのはそれにより失うリスクというものを考慮してのことであろう。

発見!ヨーロッパが驚く「本当は感情豊かな日本」

発見! ヨーロッパが驚く「本当は感情豊かな日本」 (講談社プラスアルファ新書)発見! ヨーロッパが驚く「本当は感情豊かな日本」 (講談社プラスアルファ新書)
デュラン れい子

講談社 2010-10-21
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+@新書でもう第4弾になるのか。要は海外在住日本人が日本称揚本を書けば売れるということなんだから、新書界も一斉に右に倣えすれば良いのだが、思いのほか、それほど多くない様な気もする。まあ「国家の品格」もその系譜というか嚆矢ではあるのだが、友人のイタリア人が、知人のフランス人がといった検証不可能な発言を根拠にした言説ばかりだと、+@新書とか、ベスト新書のキワモノ系でないと難しいか。+@新書は米国編も「日本人のマネをしている」の2冊めが出たけど、英国在住に書かせたヤツは英国礼賛日本批判一辺倒だったから、さすがに続編は出ていない。結局、見下されていると思っていた国が実は日本を高く評価しているというパターンが宜しいのだろうが、それこそ、中国とか韓国の出番ではないのかな。実際に中韓でも日本を評価している人は多いから、その路線で書けないこともないのだが、なぜか、現地から日本を見るという視点のものがなくて、一方的に日本人は中国人、韓国人を理解しなくてはならないといった高飛車のものばかりなのはなぜだろう。

光が照らす未来

光が照らす未来――照明デザインの仕事 (岩波ジュニア新書)光が照らす未来――照明デザインの仕事 (岩波ジュニア新書)
石井 幹子

岩波書店 2010-10-21
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戦中の話が興味深い。
この年代の女性にしてはえらく現代的。
小野洋子とか草間弥生ほどぶっ飛んでいる訳ではないが。

地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人

地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人 (小学館101新書)地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人 (小学館101新書)
アルモーメン・アブドーラ

小学館 2010-10-01
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著者は在日15年のエジプト人で、NHKのアラビア語講座の講師をしていたこともあるらしい。現在は大学講師の傍ら、サウジアラビア大使館の文化部スーパーバイザーとのことだが、湾岸諸国は大使館も外国人頼みか。ということで、アラブ人ということが第一にされているのだが、エピソードは大体エジプトのもの。本人のアイデンティティもアラブ人、イスラム教徒、エジプト人の順だそうで、これはナセル主義というやつだろうか。アラブ人とエジプト人のどっちが日本で通りが良いかというと後者の様な気もするのだが.文化的にもエジプトはアラブ随一の大国であっても、経済的には産油国の後塵を排しているのに加え、NHKでアラビア語を教えていたとなれば、日本ではアラブを代表する顔なのだろうから、エジプト人性というものにはそれほど執着はしていない様だ。在日エジプト人ものはお仲間であろう師岡カリーマ・エルサムニーさんのがあるけど、エジプトのローカル性が濃かったので、新書ということもあり、もっと一般化した啓蒙書にしたかったのか。もっとも当たり前だがアラブの多様性は認めていて、その段階を日本人が理解するのはアラブ人というものをもっと知ってもらってからということなのかもしれない。