新書野郎 -4ページ目

中国巨大ECサイト・タオバオの正体

中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)
山本 達郎

ワニブックス 2010-06-08
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ワニブックスも新書参入か。本体のワニブックスも新書みたいなものだけど、ビジネスマン向けに絞っている感じ。そんな中でタオバオがテーマというのは異色なのかどうか分からんが、ネット・ビジネスと中国というのはこの不況下で誰しもが思い浮かぶキーワードか。既に中国ネット・ビジネスものとアリババものは数種類出ているので、本気モードの人には今更タオバオの正体などなかろうが、これから何か始めてやろうという人には食いつきがよいかもしれん。いずれにしても具体性に欠けるし、日本にいて中国で設けてウハウハというには幾つものハードルを越えなくてはならんのだが、今後、資本も商材もノウハウもない「日中間の架け橋」だけの仲介業者みたいなものの競争も激しくなりそう。

爆笑!エリート中国人

爆笑!エリート中国人 (幻冬舎新書)爆笑!エリート中国人 (幻冬舎新書)
小澤 裕美

幻冬舎 2010-09
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著者は新華ファイナンスジャパンの社長で、80年代初頭に中国に留学し、ダンナも中国人という人なので、まあ向こう側の人間と言う事もできるのだが、モロ日本人の側に立って中国人を笑い飛ばしている。それだけ中国人は遠慮のいらない関係なのではあろうが、30年近く中国と付き合っていてもこういう疑問が出るもんなのかな。もっとも、日本に長くいる中国人も考えが日本化してしまう傾向があって、似た様な「自虐ネタ」を聞かされ、反応に困ることも度々あるのだけど、どうもそれは我々が考える自国民の恥部とか、そういうものではないのかもしれない。よく同じ中国人だから考え方が分かるとか言うのだけど、同じ上海人とか広東人とかいうのはあっても同じ中国人というのは自意識ではなく理念に近いものではなかろうか。少なくとも同じ在日中国人であっても、エリート(有名大卒とか)とは、池袋北口の中国人を同じ中国人と思っている気配はないし、むしろ違う中国人と思っているところが多い。

シー・シェパードの正体

シー・シェパードの正体 (扶桑社新書)シー・シェパードの正体 (扶桑社新書)
佐々木 正明

扶桑社 2010-06-01
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著者は産経の記者。ということで、ナショナリズムに訴えたものかと思いきや、そうでもなかった。SS(と表記することに悪意は無いようだが)の本質を宗教的カルトと捉えることで、エコ・テロリストや人種差別団体といったイメージを払拭させている様にも思える。いずれにしても、この団体の創設者で「教組」であもるポール・ワトソンン抜きではSSの正体を語るのは無理だし、ワトソン自体がSSの正体であるといいても過言ではない。日本人メンバーのマリコの正体ももっと掘り下げて欲しかったのだが、元教師以上のプロフィールが出てこないのは何か理由があるからだろうか。
★★

死刑絶対肯定論

死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張 (新潮新書)死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張 (新潮新書)
美達 大和

新潮社 2010-07
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月100冊読めるなら、塀の中も悪くは無いか。
★★

韓国人の作法

韓国人の作法 (集英社新書)韓国人の作法 (集英社新書)
金 栄勲 金 順姫

集英社 2010-11-17
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韓国の人類学者が外国人学生からよく受ける質問を厳選して答えるという形なのだが、本当にこんなことを聞いてくる外国人がいるのかな。日本とか中国と違って韓国に行くくらいだから、ある程度韓国について関心や知識がある学生が多いかと思うが、ハングルが世界的に優れた文字だという理由は?とか、国家にも登場する白頭山とは韓国人にとってどういう意味を持つ山?なんてのは民族史観っぽいな。日本向けということで、独島東海こそ登場していないけど。韓国のビルは4階をFで表示するが、中国では4は縁起の良い数字なので、世界中で4を嫌うのは韓国と日本だけと書いているが、少なくとも広東省では同様に4階がないケースが多々ある。韓国の女学生同士が仲良く手を繋いで歩いているのはなぜかという疑問は2002年W杯のとき、スカパーのブラジル・チャンネルでもやってたな。その時、ブラジルの韓僑の子が出てきてネイティブのポ語で、同性愛じゃないんだけど、あれには慣れないわねえとか話していたことが印象に残っている。バスの中で立っている人の荷物を座っている人が持つというのは韓国だけの習慣でアメリカにはなかったとか書いているけど、これはブラジルはあるし、ラ米ではわりと普通。日本の古い映画でもそういうシーンがあったから、昭和30年代くらいまでは習慣としてあったんじゃないかな。

スターリンの対日情報工作

スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」 (平凡社新書)スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」 (平凡社新書)
三宅 正樹

平凡社 2010-08-11
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タイトルにスターリンの対日情報工作を謳っているが、スターリン自体はほとんど言及されない。いずれにしてもスターリン自らが日本の工作に乗り出すなんてことはなかったろうし、ゾルゲの情報を見過ごしたところを見ても、隣国で潜在敵国とはいえ、遠い極東のまだ先の日本のプライオリティはソ連にとって高くなく、それは今のロシアでも事情は変わらないだろう。言及されているクリヴィツキーの文書に関しても偽書疑惑があるそうで、結局、ソ連は漁夫の利を得る形でしか日本と戦争など出来なかったということか。多くの類書をダイジェストしているので便利なものではある。
★★

高校留学アドバイス

高校留学アドバイス (岩波ジュニア新書)高校留学アドバイス (岩波ジュニア新書)
伊藤 史子

岩波書店 2010-12-18
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密かなオトナファンも多い岩波ジュニア新書で、久々に対象を明記したもの。YFU体験者の著者が優しくアドバイスするのだが、著者の経験は20年以上も昔のことか。まあ現地の事情は大して変わらんだろうけど、こちら側は結構変化があるかもしれん。語学力はアップしたという説とダウンしたという説がああるけど、20年前は中学はもちろん、高校にも外人の英語講師なんてあまりおらんかったから、いい意味での外人慣れは今の子達の方がしているだろう。もっとも、外国に行きたがらない草食系が多いというのも今の現象だそうだが、著者が経験したような反日気運も大分鳴りを潜めているんじゃないかな。もっともアメリカの片田舎に留学するかぎり、ジャパン・クールの影響なんかも無縁だろうけど。

慶應三田会

慶應三田会 (アスキー新書)慶應三田会 (アスキー新書)
島田裕巳 著

アスキー・メディアワークス 2010-10-02
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リライトものだったのか。島田も筆一本だと大変だな。

ルポ 出所者の現実

ルポ 出所者の現実 (平凡社新書)ルポ 出所者の現実 (平凡社新書)
斎藤 充功

平凡社 2010-11-16
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ベテランの著者だけど、このテーマだと苦労が多いみたい。
★★

海を越える日本文学

海を越える日本文学 (ちくまプリマー新書)海を越える日本文学 (ちくまプリマー新書)
張 競

筑摩書房 2010-12-08
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今や新華僑から芥川賞が出るくらいだから、全国紙の書評家ぐらいでは驚くほどのこともないのかもしれないが、比較文学の世界では一番名の通った在日中国人学者が著者。今回は初の新書にてプリマーだが、日本語が母語という自分の娘を念頭に書いたものかもしれない。このテーマでまず思い浮かぶというか、他者を圧倒しているのが村上春樹であるが、村上春樹の華文世界での需要とその他世界の違いについてはたっぷりとある。藤井省二の時計廻りの原則につていも触れられているが、80年代後半に既に中国で「ノルウェイの森」の翻訳が出ていながら、2000年代に入ってから大ヒットしたというのは単に時計廻りの原則だけではなかったという指摘。この小説の舞台となった60年代日本人学生の生活が、既にちょっと前の中国人学生生活の懐旧を引き起こすものになったという点は重要。ただ、性に関してはようやく時代が「ノルウェイの森」に追いついたところで、そのギャップが中国人にとっては面白い様だ。もっとも60年代に実際にあの様な性生活を謳歌した日本の学生がどのくらいいたかというと、それは分からんところだし、文革中にセックス三昧だった紅衛兵崩れの中国人は少なからずいただろう。中国のみならず、韓国や米国や欧州の事例にも踏み込んでいて、この紙幅でこれだけの内容量はスゴイ。蛇足を削って、言いたいことだけ伝えることが名文であるということを著者は理解しているのだろう。
★★★