事情のある国の切手のほど面白い
事情のある国の切手ほど面白い (メディアファクトリー新書) 内藤 陽介 メディアファクトリー 2010-08-25 売り上げランキング : 72076 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
相変わらずの内藤節。
★★
フランス的思考
フランス的思考―野生の思考者たちの系譜 (中公新書) 石井 洋二郎 中央公論新社 2010-12 売り上げランキング : 31799 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
サド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトの読み解き。フランス思想は難解に思えるのはその言語的構造所以だと信じられてきた向きがあって、フランス人自身がナショナリズムの見地からその言い分を広めてきたところもあるのだが、ここの登場するフランス思想の巨人たちが一般のフランス的思考と合致しているのかというとそういうこともなかろう。
★★
社会主義の誤解を解く
社会主義の誤解を解く (光文社新書) 薬師院 仁志 光文社 2011-02-17 売り上げランキング : 65160 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この著者久しぶりの光文社新書。英語より仏語、資本主義より社会主義ということで、共産主義と同義にされてきた社会主義の歴史をいわゆる欧州型社会民主主義の方向へシフト。まあタイの王政をモデルとしたい北朝鮮は知らんが、中国もベトナムもキューバだって、ソ連崩壊後の現在はモデルとしたいのは北欧型社会民主主義。イデオロギーに束縛された時代は終焉し、階級ではなく多様な階層を代表する党というのが理想の形であろうが、その前提となる反対党の存在を認めない限り社会民主主義にシフトすることはない。東欧の旧共産党が社会民主党へシフトできたのもソ連のくびきがなくなったかたに他ならないが、内部に反革命のくびきを抱える国ではそうはいかんところ。こうしてみると日本社会党の奇形性というものは際立っていたのだが、民主党で埋没するよりも、共産とくっついて初志に戻った方がよかんたんじゃないかな。
★★
韓国の徴兵制
韓国の徴兵制 (双葉新書) 康熙奉 双葉社 2011-02-16 売り上げランキング : 3676 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
これも2000年に出たものの加筆修正。原書は結構面白かった記憶があって、この著者の本も何冊かフォローしているのだが(さすがに韓ドラとか新大久保事件ものとかはパスだけど)、これは加筆というより減筆ではないのかな。元は新書ではないし、その後の事情も加味したとすると、相当削らなければならなかったのだうけど、こんな個人の思い出話だけの構成だったかな。それにしても双葉は一度徹底した新書を復活させたのか。韓国ものだと、鄭銀淑をデビューさせたのも前身のふたばらいふ新書だったな。何だかんだ言っても在日の書き手で韓国の軍隊経験者は呉善花ぐらいというのも特筆すべきことではあろうが。
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ブラジルの流儀
ブラジルの流儀―なぜ「21世紀の主役」なのか (中公新書) 和田 昌親 中央公論新社 2011-02 売り上げランキング : 67249 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
最近、何でもありの新潮新書が井上章一で出したけど、ブラジルもの新書って、サッカーがちらほらある以外は、ほとんど見当たらない。岩波なんか過去に出したことあったかな。中南米とか南米で一括りされてきたところはあるけど、これだけ日本との関係が深い大国を無視し続けるとしっぺ返しもあろう。次のW杯や五輪の時にまでとって置いているのかもしれんけど。それで新潮に先行された中公は元日経サンパウロ特派員で、本社役員も勤めた著者を起用。別に新潮新書に対抗した訳でも、違いを見せつけようとした訳でもないんだろうけど、中公新書には珍しいQ&A方式も、井上章一のよりお勧めという風には思えなかった。何でブラジル人は女のケツが好きなのかとか井上と同じような命題もあるのだが、USPに合格したければ、日系人を一人殺せとか、耳タコの俗諺を、さも自分が当事者から聞いた様なシチュエーションで書き連ねているのが気になる。なぜ日本人はブラジルを好きになるのかという愚問に関しては井上の本を読んだ方が分かりやすいかも。ブラジル人女性がスカートを履かないのはなぜかというのはジーンズが安いからというより、ジーンズで勤務できるからではないか。ロングスカートなどはむしろ、家政婦などの衣装として定着しているところもあって、アドリアーナ・カルカニョットとかフェルナンダ・タカイといったブラジルの女性ロッカーなどは反体制の象徴なのか、パンツ姿より好んでスカートを着用している例が目立つ。
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核がなくならない7つの理由
核がなくならない7つの理由 (新潮新書) 春原 剛 新潮社 2010-10 売り上げランキング : 24984 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日経の米国プロパーである著者の解説だが、こんな事態になってしまうと、オバマに追い風と喜んでもいられないな。各国が原発見直しに走る中、産油国のイランだけが推進を明言というのも気になるのだが、ヒロシマ、ナガサキに次いでフクシマが象徴化してしまっては、政府としても核廃絶などと言ってられないだろう。阪神の時は自衛隊違憲論者だった首相が、今回は自称原発に詳しい首相が更なる混乱を招いたというのも洒落にならんが、日本はこれで潜在的核保有国の地位を保てるのかね。
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恐れるな!
恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21) イビチャ・オシム 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-10-09 売り上げランキング : 33825 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大会前にも一冊出したから、その説明責任ということではないんだろうが、オシムの南ア総括。ずっとスカパー視てたから、今更読む必要もないんだろうけど、「日曜日のシュート」ぐらいしか解説と被っているところがない様な。これが日本でなけらば酷評していたんだろうけど、立場上、そういう訳にもいかず、選手個人個人にはアメとムチの批評。その中で相変わらず俊輔びいきは変わらんけど、次の大会は俊輔を中心にというのはさすがに無理があるだろう。駒野も貶してるんだが、庇っているんだか分からんのだが、羽生がそうだった様にPKを最後に外した選手は選手生命が終わったも同然とは酷いな。羽生がエジルに似ているというのは顔のことか。しかし、ケディラの父親はナイジェリア人でなくチュニジアでは。とてもナイジェリアの血が入っている様には見えん。最近は民放のCM自粛の余波で、この人の公共広告機構のCMをよく見せられるけど、本も何種類あるんだというくらいあるな。岡田なんか軽く凌駕している。
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世界は日本サッカーをどう報じたか
世界は日本サッカーをどう報じたか 「日本がサッカーの国になった日」 (ベスト新書) 木崎 伸也 ベストセラーズ 2010-07-24 売り上げランキング : 108804 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
せめてNZ戦はやってほしかったが、キリンカップの開催も怪しくなっている今更ながら南アの戦いのまとめ。主にヨーロッパのメディアが報じた日本戦のコメントを抽出。それもTVの実況中継の要約だったり、新聞だったりで、その国のメディアの評価も横並びではないはずだが、始めに結論ありきかな。ドイツ酷評、スペイン中立、ブラジル賞賛といったところ。ドイツは香川、内田が来る前だから、かなり偏見入っている感じだが、奇しくも対戦相手は全て過去にドイツが占領したことがある国か。ブラジルは判官びいきのところがあるけど、まあこの国は基本的に他国の代表には無関心。平均採点で本田トップ、駒野ビリは納得だが、メディアによって、川島とかトゥーリオ、中澤の方が評価が高かったりするらしい。意外なのは遠藤の低評価だが、まああのFK一本だけといったことは言えるか。ドイツも掌を返したように日本人進出ラッシュになったけど、さすがに大久保をもう一度獲ろうというチームはないか。獲っているのが、大会前からいる長谷部を除けば控え組と落選組ばかりだから、辻褄はあっているのだけど。
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名門大学スキャンダル史
名門大学スキャンダル史 あぶない教授たちの素顔 (平凡社新書) 海野 弘 平凡社 2010-09-16 売り上げランキング : 513813 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イギリス編とアメリカ編がある。それぞれオックスブリッジやハーバードの話ではあるのだが、スキャンダル史でも何でもない有名教授のエピソード集みたいなもの。海野弘なので、いきなりフリーメーソンの話とかになってしうまうのだが、最後もブッシュのスカル・アンド・ボーンズという「秘密結社」系で締め。まあアカデミズムの世界に限らず組織の論理が動く世界はどこでも秘密結社との関係を言う事ができるのだろうが、校内で自撮AVを作ってオープンキャンパスの時に高校生を前に上映されてしまい、給与保障を引き換えに辞職したら、支払がなくなったので提訴した教授とかそんな話を期待していたら大間違い。新書界最左翼の平凡社新書のくせにチョムスキーを批判的に見ているのは単に海野の趣味ではないからだろうけど、左翼新書御三家の一角である集英社がチョムを囲っているからかな。
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近代国家への模索1894-1925
近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書) 川島 真 岩波書店 2010-12-18 売り上げランキング : 8219 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩波新書のシリーズ中国近現代史。また発売が順番ではなかったが、今やこの領域のエースで超多忙の川島真に締め切り厳守を期待するのは酷というもの。この時代のことなら目を瞑っても書けるのだろうが、新書だからといって手を抜いていないし、相変わらず完璧な仕事っぷり。東京を闊歩した留学生たちの姿が浮かんで来る様でもある。ただ、魯迅が見たという幻燈に関しては、中国では史実となっているが、日本ではフィクション説も根強いので両論併記で行ってほしかった。支那呼称に関しては慣習的なものが公式化したのかと思ったが、今日から支那共和国と呼ぶことにするというお触れが出たのだという。大清帝国というのが日本側の呼称だというのは分かるけど支那共和国というのはあまり聞かないものだ。中国では今も大清帝国という言い方はしないそうだが、そりゃそうだろう。いずれ今の時代も共産朝とでも呼ばれる時代が来るのかもしれない。
★★★